今年は劇場で映画を3本しか観れていない。映画館で映画を観る、ということは好きなのだが近場にはないし、広い閉所が苦手だし、ほぼ過集中を起こして頭痛を発するので、おそらく体質的に向いていない。好きなことが向いているとは限らない例だ。本当はもっと映画を観に行きたい。ゴジマイもゲ謎もトットちゃんも観たかった。気になっている配信作品も全部追いかけたい。
それでももっと劇場での映画鑑賞のハードルが高い人は確実にいて、そのことを絶対に忘れたくないと思っている。自分の部屋から一歩出ることも怖かった日のことだとか、10年以上前に大腿骨を骨折して数ヶ月入院し、車椅子を使っていたときのこと。映画館で最前列しか用意されていない車椅子スペースを見たときの、やるせなさ。劇場の映画どころかテレビの光の明滅で発作を起こすひとがいること。
劇場で観た3本というのは「シン・仮面ライダー」と「岸辺露伴 ルーブルへ行く」「首」の3本だ。鑑賞後に「わざわざ来なきゃ良かった」と落ち込むような作品はなかった。そういう意味では、いい一年だったな…と思う。
「シン・仮面ライダー」の本郷猛が縁川ルリ子との関係性を「信頼だ」と言い切ったところは本当に心が震えたし、「首」の男性同性愛がはっきりと描写され、ホモソーシャルをどうしようもないものとして描いているところも好ましかった。「首」の秀吉は従来描かれるような人たらしではなく、コミュニケーションを弟の秀長にかなり依存していており、決して政治的に際走った人間ではない秀長の没後に豊臣家が斜陽を迎える予感がある。今までにある描かれ方ではないのだが、人間としての手触りのある秀吉だった。
シンライダーはドキュメンタリーを観ると撮影環境が不安になってくるのでこういう撮り方はしないでほしいだとか、首…KADOKAWA…だとか、全面的に気分良く映画チケットを買えていたわけでもないのだが。それでも決して、悪い一年ではなかった。